たかが文法。されど文法。– 風船にぶら下がるプーさん

前回に引き続き今回もWinnie-the-Pooh、くまのプーさんから一文を引用して英文の読み方を考えていきます。このブログを通して伝えたいのは活きた英語の習得であり、受験英語的に文法をゴリゴリ覚えたりすることは良しとしません。とは言っても、活きた英語を使うためには文法を理解することも必要になります。受験英語では目的となっていた文法の理解は、活きた英語を身につけるための手段の一つになります。

Winnie-the-Poohは童話ですので全体的に優しい文体で書かれていますが、少しだけ読み応えのある一文を選んでみました。読み応えのある、と言いましたが、ここで読解に必要な文法の知識も実はあまり多くありません。
この一文を読んでみてください。

But his arms were so stiff from holding on to the string of the balloon all that time that they stayed up straight in the air for more than a week, and whenever a fly came and settled on his nose he had to blow it off.

始めに少しネタばらし

前回、また以前相対性理論の一文を引用した時も、英文を英語のまま、英語の語順で先を予測しながら読む思考を解説しました。今回も一文としては少し長いので(カナダの大学院で論文を書いていた時に教わった「長過ぎる文章の語数」を超えています)始めにいくつかネタばらしをしてしまいます。が、このネタばらしは英語を英語として読むための予備知識だと思ってください。

文法はやっぱり苦手!という人はどうか立ち去らずに、途中を読み飛ばして下までスクロールするか、ここをクリックして次のセクションを読んでみてください。

so … that 構文

こういう書き方をすると受験英語っぽく聞こえますが、この「so … that 構文」は活きた英語でも実際によく使われますので、いい機会なので説明しておきましょう。この構文では so の後に形容詞が来て、that の後には一文が入ります。「so ○○ that □□」で「あまりにも○○なので□□」または「□□なほど○○」のような意味になります。
典型的な例文は以下のようになります。

I was so hungry that I even ate the plate.

これはもちろん比喩表現ですが「あまりにもお腹が空いていて皿まで食べた」または「皿まで食べてしまうほどお腹が空いていた」といった意味になります。

たかが文法。されど文法。
食べてしまいたくなるほどの皿って、どんなお皿でしょう(写真はイメージです)

上記の引用文では「so」の次に来る形容詞の説明がやたら長いので惑わされるかもしてませんが、「so +形容詞」の後には「that」が来る、と思いながら読んでみてください。

動詞 + 前置詞

ますます受験英語っぽく聞こえますねぇ。このブログでは度々受験英語を酷評する私ですが、活きた英語に必要な知識はもちろん拝借します。

引用文の説明をする前に「自動詞」と「他動詞」について少し説明させてください。以前「英文のReadingに必要な文法の知識」でも触れましたが、簡単に言うと自動詞はそれだけで意味を成す動詞、他動詞はその後に「目的語」が来て意味を成す動詞です。例えば「開く」は自動詞で、「(何かを)開ける」は他動詞です。つまり以下のようになります。主語の違いにも注意してください。

自動詞:The door opens.(そのドアは開く:doorが主語。目的語は無い)

他動詞:I open the door.(私はそのドアを開ける:Iが主語で、doorは目的語)

この自動詞と他動詞を意識すると英文を英語の語順で読む時に役立ちます。例えば、他動詞があれば次に来る目的語を予期しながら読むことができます。このことを念頭に置いて次の説明を読んでみてください。

Hold on to

「Hold」を「つかむ」という意味として覚えた人は多いと思いますが、実は他にもいろんな意味で使われる単語です。強敵であると同時に、飼い慣らせば役に立つ奴です。

Hold onを自動詞として使うと「そのままでいる」のような意味になります。電話中に「Hold on, please」と言えば「(そのままで)お待ちください」、また「Hold on!」と言えば「待って!」くらいの意味になります。

一方、Hold on to になると「to」が付くだけで他動詞になり「(何かに)しがみつく」のような意味になります。少し答えを言ってしまいますと、これは他動詞ですので上記の引用文で目的語を探すと直後に「the string of the balloon」が続きます。風船のヒモにしがみつくプーさんが想像できますか?

Stay up

Stay up は「夜に寝ないで起きている」のような意味で使われることが多いですが、ここでは明らかに意味が通じませんね。読み方を変えて他の意味を探しましょう。

Up in the air は「宙に浮いて」のような意味で、慣れれば単語のカタマリとして認識できるようになります。ここでは straight が挟まっています。stay up straight in the air を大きな一つのカタマリとして読めば、何かが宙にまっすぐとどまっている、ということが分かるでしょうか。

たかが文法。されど文法。
「Up in the air」というフレーズには文字通り宙に浮いたという意味もあるが、例えば決めるべきことが決まらずに宙ぶらりの状態である意味でも使われる。(写真はイメージです)

Settle on

この settle もいくつかの意味で使われ、自動詞にも他動詞にもなります。他動詞であれば何かを解決するとか、安定させるなどの意味で使われることがあり、通常は settle の直後に目的語が来ます。ここでは on が続くので、何かの上に留まる、のような自動詞として使われていると考えられます。

ネタばらしだけで説明が長くなってしまいましたので、この引用文を英語の語順で読み解くのは次回に回してしまいます。その前に、英語を読み解くとはどういうことか、少し考えてみます。

英語を外国語として読むということ

英語を受験英語として習った私たちは、英文は文法に従って読み解くものだと考えがちです。しかし、英語も日本語と同じ言語ですので、日本人が文法を意識せずに日本語を読むように、英語のネイティブスピーカーは当然文法を意識せずに英文を読みます。

では、日本人が文法を意識せずに英文を読むことは可能でしょうか。私は可能だと考えます、習得に時間はかかりますが。例えば次の一文を読んでください。

This is a pen.

文法を意識せずにこの一文を読める人は少なくないでしょう。理由として仮説を二つ挙げるとしたら、1) 簡単、2) 見慣れている、といったところでしょうか。この仮説が正しければ、もう少し難しい文章に少しずつ慣れていけば、難しい長文もいつか文法を意識せずに読めるようになると思いませんか?私はそう思います。このブログがその手助けになれば幸いです。

時間はかかりますが、継続は力なり、という言葉を信じて上達を目指しましょう。

このブログの初期に書きましたが、初めての海外生活から戻った私は、自分は帰国子女でもないから英語に堪能になるなんて無理と考え、「現状維持」を目標に英語の勉強を続けました。しかし英会話の先生の一言で「上達」を目指すようになり、その気持ちは今でも変わっていません。

One last word

みなさんご存じないかもしれませんが、このブログのタイトルは「英語で開く可能性の扉」です。可能性の扉は「開く(自動詞)」ものですか、それとも「開ける(他動詞)」ものですか?他動詞であればそこには主語があり、その主語、つまり扉をあけるのはアナタです(途中を読み飛ばしてこの意味が分からない人は、スクロールして上に戻ってみてください)。「英文が読めるようになったらなぁ」と考えていても可能性の自動ドアは開きません。

たかが文法。されど文法。
可能性の扉に辿り着くまでには長いトンネルがあるかもしれない。

次回はいよいよ上記の引用文を英語の語順で読み解いてみます。難しいと思わずに、「くまのプーさん」ですから。

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