私がよく利用するOxford Living Dictionariesのウェブサイトでは毎年Word of the Yearを発表しています。もう2月で多少「今更感」はありますが、Word of the Year 2018に選ばれた単語を紹介して、その単語について私なりに考察してみます。ここで大事なのは、英単語を和訳に頼らずに英語のまま理解するということです。
今年の単語に選ばれたのはToxicです。まずは「Word of the Year 2018」を読んでみてください、当然英文ですが。
https://en.oxforddictionaries.com/word-of-the-year/word-of-the-year-2018
「毒」を英語で言うと
面白いのは、このToxicという単語の意味を最初に「Poisonous」の一言で済ませていることです。このPoisonousという単語を同じOxford Dictionariesで引くと(ここは是非実際にOxford Dictionariesまたは他の英英辞典を引いて英文の説明を読んでいただきたいところですが、敢えてその説明を日本語にすると)体内に入ると病気または死を引き起こす、と言った意味になります。つまり「毒」ですね。
このToxicもPoisonousも英和辞典を引くとどちらも「有毒な」といった言葉に訳されます。では、これらの単語は同一と考えてよいのでしょうか。実は英語という言語には複雑な歴史があり、意味は同じでもその起源が異なる単語があります。ToxicやPoisonousもそのような単語と考えられますが、詳しい説明は言語学者に委ねるとして、実用的には組み合わされる単語が違うということを理解すれぼよいと思います。
ではToxicやPoisonousはどんな単語と組み合わされるか。それを説明する前に、もう一つ紛らわしいVenomousという単語について触れておきましょう。これも日本語にしてしまうと「有毒」ということになってしまいますが、特に毒ヘビなどのように牙やトゲにより注入される毒を意味します。これに対してPoisonousは食べたり触れたりすることで体内に入る毒を意味します。毒もいろいろですね。
「Toxic」の使われ方
話を元に戻して、Toxicという単語が他のどのような単語と組み合わされるか見ていきましょう。Oxford Dictionariesが今年の単語を選ぶ基準のひとつはOxfordDictionaries.comで調べられる頻度であり、これにはその単語を使う熟語も含まれます。2018年に「Toxic」と組み合わせて検索されたトップ10の単語は以下の通りです。
1. Chemical
2. Masculinity
3. Substance
4. Gas
5. Environment
6. Relationship
7. Culture
8. Waste
9. Algae
10. Air [Oxford University Press, 2019]
Toxic chemicalは有害な化学物質という意味です。化学物質を扱う職場では日常的に使われる言葉ですが、これが多く検索されるということは、有毒な化学物質が日常生活にも浸透しているということでしょうか。2位の「Toxic masculinity」は同じ男性として恥ずかしいことですが、世相を反映しているのでしょう。「Toxic substance」や「Toxic gas」も職場によっては頻出の表現ですが、これが日常会話で多用されるのであれば悲しいことです。
さて、Toxic chemicalに対して「Poisonous chemical」は私が知る限り日常会話ではあまり使われませんが、試しにGoogleさんで検索したところ、「Poisonous chemicals in cigarettes」や「Poisonous chemicals in tobacco」が検索候補に挙がってきました。Toxic chemicalに比べると用途は限定されるようです。少なくとも私が日常生活で単語のカタマリとして認識したことはありません。
単語のカタマリを英語のまま理解する
このブログでは度々「英語を英語のまま理解する」という話をしてきました。英訳・和訳を基礎とした受験英語では通常考慮されないことですが、日本語と英語は本質的に異なる言語であることから、活きた英語を身に付けるためには英語を和訳に頼らず英語のまま理解することが大事です。ToxicとPoisonous、またはVenomousは良い例でしょう。どれも和訳してしまえば「有毒」という同じ意味の言葉であり、混同しても受験英語的にほぼ問題ないかもしれませんが、実際は用途の異なる単語としてそれぞれ理解する必要があります。
では、それらの違いをどう理解するか?それぞれの単語を単語帳に書いてゴリゴリ覚える受験英語的なアプローチはお薦めできません。できれば上記のような単語の組み合わせをカタマリとしてなんとなく覚えるのがいいでしょう。これは一朝一夕にできるものではありません。以前多読についてお話したように、自分が好きな分野の英文を繰り返し読んで、そこでよく出てくる単語のカタマリをなんとなく覚えるのが理想的です。

ちなみに私は以前カナダにあるFaculty of Environmental Designの大学院プログラムに在籍していて、そこではToxic substanceやToxic wasteなどはよく目にする単語のカタマリでした。
英英辞典を使うということ
今回題材にさせていただいたOxford Dictionariesはいわゆる英英辞典です。英英辞典は私自身が実際に多用していますし、英語学習者にはお薦めの教材です。せっかくですので英英辞典の活用方法についてお話したいところですが、次回はその前に上記の説明でしれっと使ったGoogleさんの活用方法についてお話したいと思います。