2020年になりました。遅くなりましたが今年最初の記事ですので、Oxford University Pressが発表するその年の単語、Word of the Year 2019について考えてみます。昨年を象徴する単語として選ばれたのは「climate emergency」です。この単語が選ばれたことから、私達英語学習者は何を学べるでしょうか。最近の話題も交えて考えていきます。
英文Readingに興味がある人は、まずOxford University Pressの記事を読んでみましょう。英語学習者を対象に書かれたわけではないのでフツーにアカデミックな文体ですが、多読の練習のつもりで読んでみてください。
languages.oup.com/word-of-the-year/2019/
この記事ではclimate emergencyという単語の意味を以下のように説明しています。
Climate emergency is defined as ‘a situation in which urgent action is required to reduce or halt climate change and avoid potentially irreversible environmental damage resulting from it.’ [Oxford University Press, 2020]
ここで「urgent action is required」という部分が重要になります。Emergencyにつながる典型的な単語は従来health、hospital、familyなどでしたが、2019年になってclimate emergencyという表現の利用が急増したというこです。これは、この年に早急な対応を要する気候問題が増え、人々の関心が高まったということの現れでしょう。2019年といえば日本でも「災害級の猛暑」という、それまで聞き馴染みのなかった言葉が多用された年でした。
試しにGoogle検索で「climate」と入力したところ、下図のようなsearch suggestionsが出てきました(Chromeの設定で言語をEnglish、地域をCanadaとしています)。英語学習でGoogleさんを使う方法については「Googleさんと英語学習」を読んでみてください。

では、このclimate emergencyという単語から英語学習者は何を学べるか、2つの観点から考察してみます。
時代によって変わる言葉
私は2003年から2007年までカナダにあるUniversity of Calgaryの大学院にいました。Faculty of Environmental Designという学部にいましたので、環境について話す機会が多かったです。そこではclimate changeやclimate crisisといった言葉はよく使われていましたが、climate emergencyという言葉は覚えていません。上述のように2019年にこの言葉の利用が急増したのであれば、2007年に私の周りにclimate emergencyという単語を使っていた人がいなかったことも納得できます。
このブログで私は「活きた英語」という表現を多用しますが、英語が生き物であれば、年とともに変化するのも自然なことです。日本でも広辞苑に追加される単語が話題になることがありますよね。活きた英語を身につけるためには、その時代の英語を知る必要があります。大人になってから高校や大学で使っていた英語の参考書をおさらいしてもそれは時代遅れかもしれませんし、ましてや受験英語のように英訳・和訳ベースで考えていたらその時代の活きた英語を習うことはできません。
活きた英語を身につけるために必ずしも英語圏の国に住む必要はありません。むしろ、私がカナダに住んでいた時、カナダに住んでいながら受験英語の影響に囚われて活きた英語が身についていない日本人を何人も見てきました。大事なのは、このブログで度々述べてきたように、英語を英語のまま理解することを意識することです。英語のインターネットニュースはどこででも見れますし、最近は動画配信サービスのおかげで英語のドラマなども簡単に見れるようになりました。これらも貴重な情報源です。
ご参考までに、Oxford University PressとDictionary.comが共同で運営するLexico.comというサイトには英語学習に関する様々な情報があり、その中には英語の「死語」についての記事もあります。
Archaic words that used to be common In English

話をWord of the Year 2019に戻しますと、上述の記事にはclimate emergencyという表現に対する反対的な意見も述べられています。「Emergency」という言葉の意味が強すぎるようです。
言葉のチカラ
「Emergency」という言葉から連想する最近の話題は中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎です。数日前にはWHOがこの問題について「緊急事態宣言を見送った」ことが話題になりました。「緊急事態」は英語で「state of emergency」、「緊急事態を宣言する」は「to declare a state of emergency」です。私はこのニュースを聞いて、英語ではこれらの表現が使われたのかと思いましたが、実際に言われていたのは「constitute a public health emergency of international concern」のようです。
CNNはこのように報道しています。
Wuhan coronavirus is not yet a public health emergency of international concern, WHO says
この問題は「an emergency in China」ではあるが、まだ「a global health emergency」ではないのが宣言見送りの理由とのことです。いずれにせよ、emergencyという言葉には強い意味があるためその使用には慎重になっているのかもしれません。上述のWord of the Year 2019の記事では「declare a climate emergency」を「acknowledge a climate crisis」に弱めた例が挙げられています。
以前このブログで書いた「英語表現に秘められた意味」でPower in Languageについて話しました。言葉には人に無意識のうちに先入観を与える力があり、英語表現に込められた意味は、それを和訳して理解していては伝わらないこともあります。私達英語学習者はこのことを理解して、英語を英語のまま理解してその言葉が持つチカラも感じることが大事です。
英語を英語のまま理解する
さて、前回は次に英語を英語のまま理解するために具体的に何をするべきか話すことを予告して終わっていました。今回はいいタイミングでしたのでWord of the Year 2019の話題から英語を英語のまま理解することに話を発展させましたが、次回こそ予告通り、具体的に何をするか考えていきます。
2019年中は私が書いているもう一つのブログ「HiroのCafeめぐり」に力を入れていたためこの「可能性の扉」の更新が滞っていましたが、2020年はどちらのブログも少しずつ書いていくつもりです。



