和訳ベースの理解からの脱却:メキシコは海外?

前回和製英語の話をした時に英語学習は「習って慣れろ」だと考えていると書きましたが、今回はこの「習う」の部分を少し深く考えていきます。もちろん、ここは活きた英語を学ぶ場ですから、単語帳をめくってひたすら英単語を暗記するような受験英語的な手法はお勧めしません。ここでは、今までに何度か話してきた、英語を英語のまま理解することを考えます。

まずは私がカナダで経験した短い会話についてお話します。

午前2時、コンビニエンスストアにて

以前少しお話しましたが、私が本格的に英語を学び始めたきっかけはカナダの大学院留学でした。そこでは課題をこなすために夜遅くまで大学に残ることは多く、その日は家路についたのは午前2時過ぎでした。途中コンビニエンスストアに寄ると、店員に冗談っぽくこう言われました。

Good morning.

あぁ、と思い、私はこう応えました。

You are right. Good morning.

どういう意味か分かりますか。一般的に「Morning = 朝」、「Good morning = おはようございます」と考えられているので、午前2時に「おはようございます」と言われたと考えると変ですね。しかし「Morning」という英単語には「朝」という意味と「午前」という意味があるので、文字通りに解釈すると午前2時の挨拶も「Good morning」ということになります。

もちろん、実際はそのような使われ方はしないので、その店員さんは冗談っぽく言いました。ここで理解していただきたいのは、英語の単語と日本語の単語が必ず一対一で対応することはないということです。

英単語の意味を理解するということ

「Morning」を英和辞典で調べると実は「朝、午前」という意味がでてきます。しかし日本人の多くは「Morning = 朝」と理解していますね。このようなパターンでも、前回お話した和製英語でも、英単語の正しい意味を理解することは大事で、そのための第一歩は正しい和訳を知ることです。さらに一歩進むためには、単語レベルでも英語を英語のまま理解することです。

英語と日本語は、そもそも異なる文化で生まれた根本的に異なる言語です。ですから単語を一対一で対応させて考えることには無理があります。では、英単語をどのように理解すればよいか。私は英英辞典を勧めていますが、いきなりその話をする前に、辞書の使い方を少し考えてみましょう。

キケンな辞書の使い方:和英辞典に頼る

上記のように英語と日本語は一対一で対応していないので、英語で何か言いたい時に和英辞典をひいて最初に出てくる単語を「訳」として理解することはキケンです。例えば私が持っている和英辞典で「朝」をひくと「Morning」が出てきますか、上述のように「朝 = Morning」ではありませんね。

少し安全な辞書の使い方:和英で出てきた英単語を英和で逆引きする

上記の例ですと、和英辞典で「朝」をひいて出てきた「Morning」を英和辞典で逆引きすると「朝、午前」という訳がでてきます。さらに注釈を見ると「Morning」という英単語の意味を文章で説明してあります。ここまで見れば一つの英単語の意味が和訳ベースを超えて理解できるでしょう。

お勧めの方法:英英辞典を使う

英英辞典は英語の上級者が使うものだという誤った認識があるようですが、私は初級から中級に進みたい人、つまり初級者にこそ英英辞典を勧めています。そうは言われても英語で英語を説明されても分からない、と考えましたよね、今。

英英辞典のススメ

英英辞典の説明を最初から理解できなくても構いません。今時は電子辞書を使う人が多いと思いますが、ほとんどの電子辞書にはジャンプ機能がありますので(知らない人は取説を読んでください)、英英辞典の説明に分からない英単語があればその意味を英和辞典で調べてしまいましょう。そして徐々に英和辞典に頼る頻度を下げていきましょう。

私は英英辞典を使う利点は以下の2つだと考えています。

  • 英語本来の意味が分かる – 和訳ベースからの脱却
  • 英語を英語で説明するということが分かる – Paraphraseできるようになる

前回も、以前「聞くは一時も恥にあらず」という話をした時も、英語で何と言うか分からないことがある時は、知っている別の英単語でそれを説明して質問する、という話をしました。英語を英語で説明することは慣れないと難しいと思いますが、英英辞典を使っていると少しずつそれが分かってきます

ひとつ例を挙げておきましょう。以前友人に「『Perform』も『execute』も『実行』だが、何が違うのか?『Carry out』は?」と聞かれましたが、うまく答えられませんでした。せっかくなので英英辞典で意味を調べると、なるほど、ということが書かれていました。いい機会なので自分の電子辞書に入っている英英辞典でこれらの英単語の意味を調べてみてください。「実行」を和英辞典でひくときっと他の単語もでてくるので、それも英英辞典で調べてみてください。

最後にもう一つ目からウロコの話をしましょう。

メキシコは海外?

カナダ人の友達といろんな外国の話をしていた時のことです。私は彼女にこう尋ねました。

Have you travelled overseas?

彼女の答えは確かこんな感じでした。

No, I haven’t been overseas but have been to Mexico.

日本人は「海外」と「外国」を区別しませんが、「海外」も「overseas」も文字通りの意味は「海の外」。ですからカナダから見たメキシコは「外国(abroad)」ではあっても「海外(overseas)」ではありませんね。英語は元々いわゆるイギリスの言葉ですので、同じ島国である日本と共通の「海外 = 外国」という認識を持っていることは不思議ではありませんが、その言葉が使われる国が変われば意味も変わるということですね。

たった今「いわゆるイギリス」と書きましたが、違和感を覚えましたか?この意味は次回お話します。言葉は文化だというお話です。そんなことを知ってもTOEICの点数は上がりませんが、大事なことだと考えています。

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