前回紹介したシャドーイングは非常に効果的な勉強方法ですが、いくつか注意事項があります。今回はこの注意事項を一つずつ見ていきましょう。
![Quaternity, Listening & Speaking](http://bigakueigo.com/wp-content/uploads/2018/02/quaternity-phonetics.jpg)
目標を絞って、すべてを追わない
自分の口から出る言葉の意味が分からなかったら嫌ですよね。シャドーイングをする時に文法もすべて理解して行いたくなる気持ちは分かります。しかしあまり深追いするとそこに時間をとられて、肝心のListeningとSpeakingが疎かになってしまうのはもったいないことです。シャドーイングは英語を聞き取って口に出す練習と割り切って、分からないことがあっても進めていくことも時には必要です。大事なのは継続することです。
すべてを理解しようとする代わりに次に挙げるような目標を立ててもいいでしょう。
グチャグチャ英語を聞き取る
前回、子音で終わる単語に母音で始まる単語が続くとひと続きの単語のようになることに触れ、これをリエゾン、または「グチャグチャ英語」と呼びました。
このグチャグチャ英語を聞き取るためには、まずどの単語がどのようにくっつくか理解して、それをネイティブスピーカーと同じ速さで無理なく言えるようになるまでシャドーイングを繰り返すことが重要になります。グチャグチャ英語の聞き取りを目標にするなら、ぶっちゃけ、意味を理解していなくても訓練にはなります。
次回以降にReadingとWritingについても話しますが、このすべてを理解していなくてもシャドーイングを続けることは、実はReadingの「多読」に通じるものがあります。多読については後で詳しく説明します。
英語のリズムに慣れる
前回の説明でシャドーイングの効能として発音・リズム・イントネーションも真似できるようになることを挙げました。英語のリズムは文章の構成に依ります。例えば前回挙げた例文:
He said that that that that that girl used was wrong.
の場合、それぞれの「that」という単語の役割によって強弱が変わります。たとえば「あの」という意味の that は関係代名詞として使われる that より強く発音されます。(ちなみに前者は2番と5番目、後者は4番目です。)
これはどういうことかと言うと、文章の構成を理解しないでシャドーイングを続けても、リズムと強弱を真似してシャドーイングしているうちに文章の構成が見えてくることもある、ということです。とりあえずシャドーイングを始めて続けてしまってもいいでしょう。ただ大事なのは英語のリズムを意識して続けるということです。
単語のカタマリに慣れる
前々回、英語学習の四位一体の概要でListeningでもReadingでも英語を「単語のカタマリ」として理解するようになるという話をしました。一つの文章の中で単語のカタマリができることでリズムが生まれるので、これはリズムの一部と理解してもいいでしょう。
リズムを意識してシャドーイングを続けると、理屈は分からなくても単語がカタマリになって口から出てくるようになります。その文法を理解するのは後からでもいいでしょう。
このように、シャドーイングはとりあえず続けちゃってもいいものですが、教材はちゃんと選びましょう。
興味がある分野または人物を選ぶ
シャドーイングを続けると、良くも悪くも人の口ぶりがうつります。ですから、自分が興味があって進みたい分野、またはこんな人になりたい、という人の教材を使うのがいいでしょう。
例えば、アナタはアメリカ大統領になりたいとします(実際になれるかどうかは突っ込まないでおきましょう)。アナタが真似したいスピーチは、オバマ前大統領ですか、それともトランプ大統領ですか。前向きで、知性が高くて見識を感じられる人になりたかったら、前者は賢い選択でしょう。あるいは、ポピュリズム狙いで中身が伴わなくても盲目的な支持を集めたいのであれば後者もやぶさかでないかもしれません(お勧めできませんが)。
シャドーイングは継続が大事ですから、そのためには自分が興味のある分野の題材を選ぶことも大事です。教材選びについては後で説明します。
辛抱強く続ける
これが何よりも大事ですね。個人差はありますが、シャドーイングの効果が出るまでは時間がかかります。英語を学ぶ心構えで目標は高く、気は長くという話をしました。英語の上達に焦りは禁物です。自分に対して辛抱強く、高い目標に向かって継続していきましょう。
ここまで読んで、英語のリズムが大事だということはなんとなく分かっていただけたでしょうか。リズムについて詳しく話をする前に、次回は一度ReadingとWritingの話をしましょう。