多読のすすめ:英文を読み続けると見えてくるもの

前回、多読とは文中に知らない単語があっても英文を読み続けることと書いてあるのを見て、「無理むりムリ」と思った人は多いかもしれません。しかし、英語をしゃべるために必要なのがしゃべることであるのと同じように、英文を読むために必要なのは英文を読むことなのです。

まず私が多読に目覚めたきっかけを話しましょう。それは偶然でした。

反面教師になってくれた単語好きのオタク君

私が学校の英語の勉強で役に立ったことを聞かれると、いつも「単語を覚えるのをあきらめたのが良かった」と答えるのですが、大抵は聞き返されます。英単語を覚えるのは大事ではないかと。もちろん単語を覚えることをあきらめて終わったらダメダメですが、その代わりに文章全体の構成を理解することに努めました。
それにはきっかけがありました。

高校1年の時、近所の公民館で劇を観覧する「観劇教室」がありました。全然期待せずに行ったのですが、感動しました。ストーリーも良かったし、前の方で見ていたので、演者の腕に光る汗まで見えたのもよく覚えています。

その帰り道、クラスで勉強が良くできるオタク君が「つまんなかったから、ずっと『でる単』読んでたぜ」と自慢げに話していました。「でる単」とは「試験にでる英単語」という本の略で、文字通り試験でいい点数をとるために英単語を覚えるための本です。私が感動した劇の最中に「でる単」を読んでいたオタク君。私は必死になって単語を覚えるなど、人の心がない人がすることだと短絡的に考え、単語を覚えることをあきらめました。
その考えが正しいかどうかは別として、この時の判断が後で役に立つなど考えてもいませんでした。

英単語を覚えることをあきらめた高校生の私は、分からない単語が含まれる文章でも、とにかく読み続けるようにしました。すると、知らない単語でもそれが動詞なのか、形容詞なのか、なんとなく分かるようになって、英語の文章構成が見えてくるようになりました

当時の私の「和訳」問題の回答は、知らない英単語は英語のまま残して、それでも1つの文章として完結する文を書いていました。もちろんそれでいい点数は取れませんでしたが、このクセが後に多読へ発展し、活きた英語を身に付けるために役立ちました

英文の多読で見えてくるもの

文章には必ず動詞が一つ含まれます。文章の中のどの単語が動詞か分からなければ、その文章を理解することはできません。英語の単語には動詞にも名詞にもなる単語が多々あり、どんなに必死に「でる単」を使って単語を覚えても、それだけでは動詞を見つけることはできません

多読を続けると英語独特の文章のリズムがぼんやりと見えてくる、つまり文章の構成が分かるようになり、これは動詞を見つけることにあるということが分かってきます。

多読のための教材選び

じゃぁ多読を始めましょう、と言って始められるものでもないですよね。まずは自分に合った教材を選びましょう。教材選びに大切な要素は英文の難易度・分野・文体だと考えています。

教材の難易度

極端な話、子供向けの本は平易な文章で書かれていますよね。単語も比較的簡単なものが使われています。書店でも図書館でも、最近ではオンラインでも、英語を母国語とする子供たちのために書かれた多種多様な本や文章を目にすることができます。まずは平易な文章で書かれた教材から始めるとよいでしょう。

好きな分野

好きな分野の教材を選ぶ理由は2つあります。

1. 興味を持って続けられる
2. 背景が分かり、知っている単語も他の分野より比較的多い

上級を目指すには背景知識がない分野の話でもスラスラ読めるようにする必要はありますが、まずは身の丈に合った教材を見つけましょう。

興味がある分野の文体

上記のように始めは難易度の高くない文章から始めることが大事ですが、慣れてきたら自分が興味がある分野で使われる文体で書かれた文章を選ぶようにしましょう。英語の文体に慣れることはWritingで重要になります。これはシャドーイングの注意事項で述べた教材の選び方と共通の考え方です。

英語の文体については後々詳しく説明します。

多読の効果が出るには時間がかかる

冒頭で私が高校生の時の体験について話しましたが、この時期が実は大事でしたね。一般的に大人より高校生のほうが頭が柔らかくて、新しいことを習得するのも大人より早いということを経験上知っている人は少なくないでしょう。

このブログの初回で「やべぇ、英語しゃべれねぇ」からすべてが始まったという話をして、初めて通った英会話教室の方に「20代後半で英語を習い始めるのはギリギリ」だと言われた話をしました。今でも20代後半を過ぎてから英語を習い始めても決して遅くないと思っていますが、効果が出るまで時間がかかることは覚悟する必要があるでしょう。

高校生ほど若くなければ多読の効果が現れるまでに時間がかかることを意識して、辛抱強く続けてみましょう。

前回の最後に、森を見るために必要なのが多読で、木を見るために必要なのが文法の理解だと書きました。次回はこの文法について少し詳しく話をします。

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