筆者の気持ちで読む:英文WritingのためのReading

このブログの初回の記事でも触れましたが、私が英語を習い始めた時、受験英語と活きた英語の違いに気づきました。この活きた英語について、私が仕事で英文をたくさん読んでたくさん書くようになってから分かってきたことがあります。

ReadingとWritingの話を最初にした時、英文Writingができるようになると人の文章を読む時に書き手の気持ちになって読むことができるようになり、先を予測しながら読めるようになると書きました。そしてWritingのために必要なのがReading、特に多読です。これは一朝一夕でできるようになるものではありません。しかし、このことを意識して英文を読むだけでも、受験英語的な英訳・和訳ベースの理解から脱却する第一歩になります。

書き手の気持ちになって読むことを意識するために、まず英文の文体について少し話しましょう。

英文の文体

この話をすると「英語にも文体ってあるの?」とよく訊かれます。これはおそらく受験英語の影響でしょう。英訳でも和訳でも一字一句字義通り変換するだけの受験英語では文体は通常考慮されません。しかし英語も本来は人が使う言語ですから、当然文体はあります。

私は翻訳の仕事をしていた時期がありますが、日英翻訳(私は受験英語的な「英訳」と区別するためにこのような言い方をします)では文体を必ず意識していました。特許資料や技術文書から芸能人のブログまでいろいろ手がけましたが、これらの文体は当然違います。

例えば文体によって主語の選び方が変わります。基本的なルールとして、ビジネス文書や論文などでは一人称の「I」や二人称の「You」は使いません。いわゆる「無生物主語」を使います。エッセイや一部の雑誌記事では筆者の考えを表すために「I」を使うことがあります。

文体の違いについてはこれからも折を見て触れていきます。

アインシュタインの気持ちで

前回はアインシュタインの「Relativity: The Special and General Theory」から一文を引用しました。これをアインシュタインの気持ちで読んでみましょう。ここでは条件である前半部分は省略し、本文である

there was no need to doubt the validity of this principle of relativity

に着目します。「there was (is) no need to」が単語のカタマリだと書きましたが、このカタマリは

you did (do) not need to

に書き換えられます。この「you」は「アナタ」という意味の二人称ではなく、一般的に「人は」くらいの意味になります。しかしここは学術的な内容なので「there was (is)」を使いましょう。

「doubt」の後には大抵「何か」かthatで始まる一文が来ると書きました。thatで始まる一文にするならば

that this principle of relativity is valid

となります。しかし、筆者としては大事な部分は最後に「トリ」として登場させたほうが気分がいいかもしれませんね。この「トリ」が

this principle of relativity

です。つまり「何か」に相当するのは「the validity of this principle of relativity」となります。

私は当然アインシュタインと話す機会はないので、この解釈は私の想像でしかありません。しかし、文体や語順を変えると微妙な意味を含ませることも出来ることは分かっていただけたでしょうか。

このような意味を持たせた英文Writingをするために必要なのが、筆者の気持ちで読むReadingです。これが出来るようになるためには相当な量の英文を読む必要があるかもしれません。このブログをしばらく読んだ人はもう聞き飽きたかもしれませんが、目標は高く、気は長く、ということです。まずは意識することです。

一人称と言えば、

今回はReadingとWritingがテーマですので少し話は変わりますが、一人称の話をしたので、Speakingで一人称を使い分ける話もしておきましょう。日本語では主語を省略することが多いですが、英語の文章には必ず主語が入るので、ここに微妙な意味を込めることもできます

例えばオバマ前大統領が選挙運動をしていた時に「Yes we can」というフレーズが話題になりましたね。この「we」は一人称でありながら、聴衆も含めた意味があります。つまり「Yes you can」と実質的に等価です。一方、トランプ大統領は「I」を多用することが度々指摘されます。これが潜在的であっても意図的であっても、対照的な意味が伝わってきます。

湾岸戦争を題材にしたあるアメリカ映画で、ある戦車部隊の誤射が軍事裁判にかけられるシーンがありました。その部隊の指揮官が裁判で「We」と言いかけて、「I」と言い直すシーンがあります。この一言に、誤射の責任は部下ではなく自分にある、という気持ちが現れています(理想的な上司ですね)。日本語字幕を書いた人はこの訳に悩んだかもしれません。

WritingでもSpeakingでも、英語的な表現が理解できれば意図を含蓄した言い回しもできるようになります。そのために必要なのはListeningとReadingです。次回はこのListeningとReadingについて少しお話しましょう。

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