学校で英語を習っていた頃、なぜ文法を間違えてはいけないか、理由は明確でした。テストでいい点数がとれないから。
このブログでは文法と語彙に特化した受験英語からの脱却を目指していますが、これは英文法に無頓着になってもいいと言う意味ではありません。実際、正しい文法を使うことには利点があります。
一つ誤解しないでいただきたいことは、間違えることは悪くないと言うことです。何かを習得したければその過程で間違えることは当たり前で、むしろそれは学ぶチャンスになります。ある人の言葉を借りれば、間違えから学ばないことは別の次元の間違えだということです。間違えから学ぶことについては次回じっくりお話しします。
英文法とは?
まずは簡単な例を見てみましょう。日本人が苦手な文法の一つに時制があります。理屈は単純ですが、英語を話す時や書くときに正しく時制を使えている日本人は非常に少ないです。特に話す時は常に現在形を使う人が多いようです。
以下の3つの例文を見てください。
I missed you.
I miss you.
I’ll miss you.
「miss」という他動詞を単純に過去形・現在形・未来系にしただけです。しかしその意味には時制以上の違いがあります。
会いたかった。
淋しい。
淋しくなるね。
時制を間違えたら伝えたいことがどれだけ違ってしまうか、少し分かっていただけたでしょうか。
「文法」と言っても、その捉え方は多々あります。ここでは簡単に、
1. 単語の使い方
2. 構文
の2つの観点から考えます。前者は上述の時制や、前回扱った可算名詞と不可算名詞や、自動詞と他動詞の使い方などが含まれます。後者は関係代名詞や仮定法などが含まれます。今回は主に前者を扱います。
私は経験上、英文法を間違えると以下の状況になると考えています。
- 意味が通じない/間違って伝わる
- 何か変
- もったいない
以下に一つひとつ解説していきましょう。
意味が通じない/間違って伝わる
おそらくこれは理解するのが難しくないでしょう。ここでは代表的な間違えの例をひとつだけ挙げておきます。
最近は海外で活躍する日本人のプロスポーツ選手が多く、海外で観戦する人もいるでしょう。日本人選手の活躍を見たアナタは現地で会った人にこう伝えたいとします。
俺は興奮してる!
多くの日本人はこの時、こう言ってしまいます。
I’m exciting!
しかしこの「excite」という他動詞は「興奮させる」という意味があります。即ちこれは、
俺は(誰かを)興奮させてる!
という意味です。ちょっと危ないですね。文法を正しく理解することの大切さを分かっていただければ幸いです。
ちなみに正しくは、
I’m excited!
になります。
英文法を間違えると、何か変
このブログでは度々、英語を単語のカタマリとして捉えて、英語を英語のまま理解するという話をしてきました。これが理解できるようになると、文法を間違えると「何か変」な感じがしてきます。これが大事です。
実はこの「何か変」という感覚はTOEICの高得点につながります。実用英語検定、いわゆる「英検」では英文法の知識が求められます。例えばバラバラの単語を並べ替えて文章を作るなど、どんな「実用」性があるのか見当がつきませんが、このような問題を解くためには文法の知識がものを言います。
一方、TOEICのReading問題を同じように文法の知識に基づいて解こうとすると時間がなくなるでしょう。実際、私も始めはそうでしたが、TOEICのReading問題を全問回答できなかった人は多いのではないでしょうか。私がTOEICで高得点を取れるようになったのは、英文を読んで「何か変」と気付くようになってからです。選択肢のなかから「しっくりくる」ものを選びながら解き進め、文法の知識は余った時間の見直しで使っていました。
TOEICについては近いうちにじっくり話します。
では、どうすれば「何か変」と気付くようになるか。くどいようですがシャドーイングと多読を続けると、なんとなく英語を英語のまま理解できるようになります。騙されたと思って試してみてください。
英文法を正しく使えないと、もったいない
英語と日本語は根本的に違う言語なので、英語なら簡単に言えることが日本語ではうまく言えないこともあれば、逆もまたしかりです。学校で英語を習っていた時は覚えなくてはいけない英文法のルールが多くて「嫌だ!」と思った人は多いと思いますが(もちろん私もそうでした)、試験から開放されて実用的な英語を使うようになると、これが便利なんです。
一例として「フライトが欠航になった」を英語で言ってみましょう。これは状況により以下のように言い分けられます。
The flight was cancelled.
過去のある時点で欠航が決まった
The flight has been cancelled.
過去のある時点で欠航が決まり、今に至る
The flight had been cancelled.
過去の話をしていて、それ以前に欠航が決まっていて、その時点に至る
これが試験問題なら「面倒くさくて嫌だ!」ということになりますが、微妙な違いで状況の違いを説明できるのは便利なことです。使いこなせないともったいないです。
そもそも英語は他の文化で人がコミュニケーションのために使う道具であり、試験問題を作るためのものではありません。ですから、すべてのことに意味があります。一見面倒な文法のルールも、異文化を学ぶためだと思えば見方も変わるのではないでしょうか。
それでも間違えることは大事
英語を正しく理解することは大事ですが、前述のように、間違えることは理解するための大事なステップです。正しいことを覚え続けるより、間違えに気付いて「あっ!」と思うほうが深く記憶に残るでしょう。
次回は、間違えたり分からないことを人に聞いたりしながら英語を学ぶことについて考えていきます。