和製英語:Japanglishの世界へようこそ

「Hello, how are you?」「I’m fine, thank you. And you?」「I’m fine, thank you.」
こんな会話をする英語のネイティブスピーカーはいませんが、言いたいことは分かります。しかし日本人が英語だと思っていても他の人には意味が通じない、または違う意味が伝わってしまうのが和製英語で、「Japanglish」とも呼ばれます。

和製英語を使うとどうなるか

以前間違えることは英語学習のために大事だという話をした時に、間違えの捉えられ方として以下の3つを挙げました。

  1. 何を言いたいかは分かる
  2. 意味が通じない
  3. 違う意味が伝わる

上記の1に「実害」はありませんが、残念ながら和製英語を使うと2か3の結果になります。
和製英語は主に3つのパターンに分けられ、パターンにより捉われ方が変わります。そのパターンとは:

  1. 本来の意味と違う意味で使われる(違う意味が伝わる)
  2. 英語として意味をなさない(意味が通じない)
  3. 英語以外の外国語が語源(意味が通じない)

以下にそれぞれのパターンを見ていきましょう。

英語本来の意味と違う意味で使われる

まずは例を挙げてみましょう。下の表では、和製英語/日本人が認識している意味/その単語の本来の意味/日本人が言いたいことを表す英単語、の順で載せてあります。一番上の例であれば、「Hip」という単語を日本人は「尻」の意味で使いますが、hipという英単語が意味するのは「腰骨」で、尻を表す英単語は「Buttocks」である、となります。

Hip腰骨Buttocks など
Reasonable安価道理にかなったLow price, inexpensive など
Mansionマンション豪邸Apartment
Liveライブ生(放送)、などLive performance, live concert など
Shoe creamシュークリーム靴墨Cream puff
Sand挟むSandwich ?

これらの和製英語には何らかの由来があることが多いようです。例えば安価という意味で使われるリーズナブルは「Reasonable price」が語源だと考えられます。これは文字通りには「道理にかなった値段」という意味ですが、一般的には「相応に安い」のような意味で使われます。

和製英語の世界へようこそ - Sand
甘いチョコレートの砂。口の中がジャリジャリしそう

最後のシュークリームはちょっと例外で、語源はフランス語の「chou à la crème」のようです。が、日本人がシュークリームと言うと「Shoe cream」に聞こえます。靴のクリーム、つまり靴墨です。シュークリームを和英辞典で引くと「Cream puff」が出てくるのでそう書きましたが、実際は日本のシュークリームのような菓子は海外ではあまり見かけないので「Cream puff」と言ってもピンと来ないことがあります。

英語として意味が通じない

日本人が英語を話して「What do you mean?(どういう意味?)」と聞かれる場合、発音やイントネーションが間違っていて伝わらない場合もありますが、英語だと思っていたことが実は和製英語であった場合もあります。

下記の例では、和製英語/日本人が認識している意味/日本人が言いたいことを表す英語表現、の順で載せてあります。一番上の例であれば、「Soft cream」を日本人は「ソフトクリーム」の意味で使いますが、それは英語として意味をなさず(Creamはそもそも柔らかいので「柔らかいクリーム」の意味が分からない)、ソフトクリームを表す英単語は「Ice cream」、となります。

Soft creamソフトクリーム(Soft) Ice cream
Version upバージョンアップUpgrade
Dust boxゴミ箱Garbage bin (カナダ), Trash can (米) など
OB / OG卒業生alumnus (alumni) / alumna (alumnae) など
Live houseライブハウス

最後の「ライブハウス」は、それに相当するものが海外にあまりないので、何と言うか分かりません。どなたかご存知の方いますか?(そう考えるとライブハウスは誇れる日本の文化ですね。)

和製英語の世界へようこそ - Dust Box
「ホコリ箱」にゴミくずを入れてもいいのだろうか

英語以外の外国語が語源

英語以外の主にヨーロッパ系の言語が語源の外来語を英語と思い込んで使っているケースもあります。下記の例では、和製英語/日本人が認識している意味/日本人が言いたいことを表す英語表現/和製英語の語源となる言語、の順で載せてあります。一番上の例であれば、「Maron」を日本人は「栗」の意味で使いますが、栗を表す英単語は「Chestnut」で、語源のMarronは「フランス語」、となります。

MarronChestnutフランス語
ArebeitアルバイトPart-time jobドイツ語
EnqueteアンケートQuestionaireフランス語
Hors d’oeuvre前菜Appetizerフランス語
PensionペンションB&B (Bed and breakfast) ?フランス語

最後のペンションは例外で、英語の「Pension」という単語は「年金」を意味するので上述の「本来の意味と違う意味」とも考えられますが、宿泊施設としてのペンションの語源はフランス語のPensionです。北米でそれに近いものはB&Bですが、ちょっと違うので「?」としました。

自分の英語、通じてない?と思ったら

和製英語を挙げ始めたらキリがないので、ここではほんの一例を挙げています。この中でどれだけの単語を英語として使っていましたか?

このブログで既に何度か述べましたが、間違えることは悪くありません。英会話は間違えに気付くことで上達していきます。いい機会なのでこのプロセスをもう一度おさらいしましょう。

間違えに気付く

自分が、日本語を一所懸命話している外国人と会話しているところを想像してみてください。その人の言うことが度々分からないとしたら、そのうち何回「どういう意味?」と訊けますか。おそらく毎回訊くという人はあまり多くないでしょう。それと同じで、自分が英語を話している時に相手が黙って聞いていても、すべてが通じているわけではないと考えたほうがいいかもしれません。

ではどうすれば自分の間違えに気付くか。以前コミュニケーションとしての英会話について話した時、言語が果たす役割は7%だという意見を紹介しました。それ以外の表情や声のトーンなどは英語の聞き取りができなくても読み取れます。このようなサインを見逃さないことが大事ですが、人のコミュニケーションを見ているとそのことに気付かない人が少なくありません。

間違えに気付いたら、次の一歩はそれを上達につなげることです。

英語で聞き返す

これも以前、間違えることは学ぶチャンスだという話をしました。聞くは一時も恥ではありません。言いたいことが伝わらなかったら、それを知っている別の英語で言い換えて、英語で何と言うか聞いてきましょう。せっかく外国人と話をしていても会話中に電子辞書を使ってはもったいないです。ここでは英語力 (語彙力) より発想の転換が求められます。

習って慣れる

今回の主題の和製英語は教わるまで知らなかった人が多いようです。今まで「英語なんて習うより慣れろだ」と豪語する人に何人も会ってきましたが、そうやって活きた英語を身につけられる人は意外と多くありません。日本人固有の受験英語や和製英語の呪縛は想像以上に堅いもので、そのことに気付くことすらない人が非常に多いです。

「慣れる」ことが大事なのは言うまでもありませんが、受験英語から脱却するためには誤った知識や習慣を正すために「習う」ことも大切です。これも以前、ListeningとReadingの「パターン認識」について話した時や、英語で英語を学ぶことについて話した時にちらっと書きましたが、私は「習って慣れろ」が大事だと考えています。何事もバランスが大事ですね。習う、といっても参考書を読むことがすべてではありません。上記のように人に聞くことも大切な習う機会になります。

英語の習い方もいろいろ

英語学習の方法も、突き詰めていくと「習う」と「慣れる」の境界は曖昧になっていきます。私は、悪気は毛頭ないのですが、時々英語学習のことで人をビビらせることがあります(信じてもらうないかもしれませんが、善意しかないんです)。次回はちょっと「硬派」な英語学習方法についてお話します。

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