英会話上達のために目指すもの

前回は英会話を習い始めた人はおそらく誰もが経験するであろう上達段階とその特徴について考察しました。今回はそれぞれの段階で何をするべきか考えていきます。やはりここでも大事なのは、何を目指すか、つまり英会話の目標であると私は考えています。
本題に入る前に少し例え話をしましょう。

私はカナダの大学に通っていた時に半年間ほど空手を習ったことがあります。空手はフルコンタクト、即ち実際に打ち合うものと「型」に分かれ、私が習っていたのは後者でした。しかも私が所属したクラブは老若男女共に和気藹々と空手を楽しむ感じでした(カナダのクラブですから)。もしもここにフルコンの空手道を極めたい人が来たら、何ができるでしょうか。

英会話も似たようなものです。英会話を習う目的は、外国人の友達とバーに飲みに行きたいといったカジュアルなものから、ビジネスの現場で英語で渡り合いたいといったガチなものまで、様々でしょう。それぞれの目標のために目指すものは違うということをまずは理解してください。

では、前回説明した上達段階で何をするべきか、私なりに考察してみました。

第一段階:聞き役から一歩踏み出す

前回も書きましたがこの段階は人によって数時間から数ヶ月にも及ぶようです。数時間で踏み出せる人にはアドバイスなどいらないでしょう。なかなか踏み出せない人は、自分はなぜ英会話を習い始めたか、このまま踏み止まっていたらどうなるか、考え直してはいかがでしょうか。

この段階で「重症」な人は、英語が話せないからもっと単語を覚えて文法を勉強しようと考えてしまいます。典型的な受験英語の被害者ですね。もう一つ例え話を挙げるなら、これは野球を始めた人がヒットを打ちたいがために筋トレだけを続けてバットを握らないようなものです。ボールを打ちたければまずバットを握って、素振りでも始めるべきでしょう。ボールを打ち返せるようになって、飛距離を伸ばしたいならば筋トレも必要かもしれません。

英会話も同じです。英語を話すためにまず必要なことは、何でもいいからまずは英語を口に出すことです。間違っていてもかまいません。間違えるのが恥ずかしい人は一度豆腐の角に頭をぶつけてみましょう。

英語を口に出せるようになって、もっと表現の幅を広げたいとか、複雑なことも説明してみたいならば、そこで必要なのが語彙と文法で、これは第三段階、第四段階で考えるべきことです。

第二段階:コトバを紡ぐ

第一段階から一歩踏み出して英語が口から出るようになって、適応力とある程度の知識があればすぐに短い文章で話せるようになります。文法も単語の用法も完璧である必要はありません。私は、この早い段階から自分が目指す英会話を意識してみるべきだと考えています

例えば、前述のように外国人の友達と飲みに行きたい、ということが英会話の動機であれば、外交的な人は「英単語会話」だけでも意志の疎通がある程度できるようになります。それで十分楽しければ無理して文章で会話をする必要もないでしょう。和気藹々と空手の型を習うようなものです。

ただし、友達と腹を割って話して分かり合いたい、または仕事である程度複雑なこともちゃんと伝えたい、といった場合は話は別です。以降はこのような人達が何をするべきか考えていきます。

英語学習のテクニック

このブログでも英語学習のテクニックをいくつか紹介してきました。例えば英語で傾聴することはテクニックとしてだけではなく人と人の会話で大事なことです。さらに一歩進んで英語で合いの手上級編についてもお話しました。これらは人との会話から英語を学ぶ方法ですが、英語学習のために時間を費やす本気度があれば英語学習の四位一体のひとつであるSpeaking-Listeningを上達させるシャドーイングは非常に有効な学習方法です。字を読むことに嫌悪感を感じないのであれば英語の多読も強くお勧めします。

大事なことは、今までにも折に触れて述べてきましたが、自分に合った英語の学習方法を少なくとも2つ組み合わせて続けてみることです。

テクニックよりも大事な発想の転換

語彙を増やすのは英語を口に出せるようになってからと言いましたが、単語を知らないと話せないでしょ、と思った人もいるでしょう。日本語で考えた事を英訳して話そうと考えて、その訳語が出てこなくて言いたい事が言えない経験をした人は多いでしょうし、そうすると語彙がないと英語を話せないと考えてしまいがちです。しかし、訳語に捕らわれずに自分が知っている違う言葉で説明しようとすると、なんとなく伝わることもあります

英会話に必要な発想の転換
飲み友達を作るために必要な英会話のレベルは高くないかもしれないが、少ない語彙で物事を説明するために発想の転換は必要かもしれない。

賛否両論のある実例を一つ挙げてみましょう。私が日本人とアメリカ人の友人数人と居酒屋に行った時のことです。ある日本人は焼酎とは何かとアメリカ人に聞かれ、日本酒の一種かと言われて、うまく説明できなくて困っていました。彼は私に「『蒸留』って英語で何ですか?」と聞いてきました。日本酒は醸造酒、焼酎は蒸留酒だと説明しようとして、訳語だ出ずに困っていたようです。ちなみに蒸留はDistillまたはDistil(蒸留所のことをDistillerと言いますよね)、蒸留酒はSpiritsですが、そのような単語を使わずに私は一言こう言いました。

Just like rum.

いまいち分かっていない様子でしたので、続けてこう言いました。

It’s strong, but not like brandy. Some people drink it straight, or on the rocks. Some people drink it with soda or coke.
(強いけど、ブランデーみたいじゃない。ストレートやロックで飲む人もいるし、ソーダやコーラで飲む人もいる。)

するとそのアメリカ人は納得した様子でこう言いました。

Ah, it’s like rum.

ひとつ誤解しないでいただきたいのですが、私は焼酎愛好家です。焼酎をラム酒を一緒だとは考えていません。しかし、庶民的な飲み物である焼酎というものを何も知らない人にそれがどんな飲み物か分かってもらうためには、日本の「酎ハイ」と同じように飲まれている「Rum and Coke」を引き合いに出す方が、馴染みのない単語を無理して使おうとするよりも説明しやすいということを理解していただけますか。

思いついた日本語に捕らわれて、例えば「蒸留」の訳語が出てこないのでそこで止まるのではなく、発想を変えて知っている単語で説明できる別の言い方を考えて何か口に出してみると、とりあえず会話になりますし、思いも伝わるようになります。上記の焼酎の説明に難しい単語も複雑な文法も使っていないことは分かっていただけますか。始めのうちは上手く文章にならなくても、まずは知っている単語を口に出してみることです。

第二段階の説明だけで長くなってしまいましたが、次回は発想の転換について少し補足し、続いて第三段階で必要な受験英語からの脱却について考えていきます。

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