十人十色の英語:ご当地英語から個性まで

前回は英語の母国の話をして、英語を母国語とする国の異なる英語について触れました。今回はその「ご当地英語」を、経験を踏まえていくつか紹介します。ご当地英語も大事な個性ですが、個人的には人々の英語にも個性があっていいと考えています。けれど、英語を外国語として使う私達日本人はどのようにして英語で個性を出せばいいのでしょうか。

突っ込んだ話をする前に、面白いオンライン記事を見つけたので読んでみてください。
Don’t call Canadians ‘American’ or smile at the French, British hoteliers told

ハイ、英語の記事です。多読の教材にいいですね。別に意地悪する気はないので、多読の教材については今度ゆっくりお話します。この記事に書かれていることをざっくり説明すると、英国のホテル従業員に対して提示された外国人客に接する時の注意事項です。すべての情報が適切かどうか分かりかねますが、日本人客に対する注意事項は個人的に納得できます。私も困った経験が多々あります。

ここで注目したいのは、記事のタイトルにもなっている「カナダ人を『アメリカ人』と呼ばない」というアドバイスです。カナダに住んでいた時はこれを実感しました。「北米」として一緒にされがちですが、その国民性はかなり違いますし、使う英語にも違いがあります。

ご当地英語を理解する

カナダに住んでいた時によく見ていたカナダ産のコメディードラマで、Canadian EnglishとAmerican Englishの違いを自虐的に強調する場面がありました。背景にはカナダとアメリカが区別されないという事情がありますね。例えばアメリカ人が言うRest room、つまり「トイレ」はカナダではWash room、アメリカ人がいうSodaはカナダではPop、といった感じです。

日本の「お手洗い」表示
羽田空港国際便出発ロビーにある「お手洗い」の表示。英語表記は「Toilets」。男性は青、女性はピンクというGender stereotypesに日本らしさが見られる。

ちなみに、以前和製英語の世界で紹介しましたが、日本ではDust box(ホコリ箱)と呼ばれるゴミ箱はアメリカではTrash can、カナダではGarbage binになります。ついでに言うと上述のトイレをToiletと記述する国も日本以外ではあまり見ません。一度だけ飛行機の乗り継ぎで立ち寄った英国の空港にはToiletsと複数形で表記されていました。英語のToiletは「便器」を意味するので、公衆便所に便器が一つだけあるのでなければ、それをToiletと単数形で表すのは不適切ですね。

カナダの「お手洗い」表示
カナダのショッピングモールにあるお手洗いの表示。Canadian EnglishではWashroomになる。男女を色分けするような日本的なGender stereotypesは一般的に受け入れられない。

私が初めて行った海外はトンガ王国という発展途上国だという話を最初にしました。かつて英国の保護国だった影響でトンガでは基本的にBritish Englishが使われます。ある日、仕事中に同僚にこう言われました。

Pass me the torch.

日本人がTorchと言われて想像するのは「たいまつ」だと思いますが、彼が指差したのは懐中電灯でした。American EnglishではFlashlightで、日本人にはこの方が馴染みがありますが、British EnglishではTorchになります。

またトンガにはオーストラリア人が多く住んでいて、ある日、知人のオーストラリア人に言われたことが私にはこう聞こえました。

I made spice for you.

俺のために胡椒でも作ってくれたの?と思いましたが、彼が実際に言ったことはこうでした。

I made space for you.

つまり「場所を空けておいたよ」という意味ですね。オーストラリアやその他の幾つかの地域では「エイ」の発音が「アイ」になります。オーストラリア人の挨拶と言えば「G’day (Good day), mate」が有名ですね。これを日本人が聞くと「ぐだいまい」に聞こえます。

英語発祥の地、英国でもEnglandとScotlandでは使われる英語が違うそうです。どの英語も正しいとか間違っているとかいうものではなく、違い、即ち個性があります。上述のように、私は個人の英語にも個性があっていいと考えています。しかし、英語を外国語として使う私達日本人はどのようにして個性を出せばいいのでしょうか。

英語で個性を出す。

少し自慢話をすることをお許しください。トンガから帰国して暫くサラリーマン生活を送った後、私はカナダの大学院に留学しました。北米の大学院に入学するためにはEssay(小論文?)を提出する必要があり、そのために私は日本で留学予備校に通いました。大学院留学を目指すくらいですから英文法くらい理解していることは前提になります。Essayの指導でも英語の間違いを直すようなことはせず、論法についてアドバイスを受けます。文法の間違えがあっても、むしろ「留学生らしさ」としてそのまま残されます。

アメリカ人のカウンセラーと論法についてディスカッションした後、この独特のWriting styleは直したくない、と言われました。自分の個性を認められたことは素直に嬉しかったです。誤解しないでいただきたいのですが、始めから英文Writingが得意だった訳ではありません。初めて受けたTOEFLのWritingは散々でした。大学院はおろか、専門学校も難しいレベルでした。しかし努力は報われます、時間はかかりますが。

カナダに渡ってからは、感情を込めた話し方が面白いとカナダ人の友達に言われたこともありました。外国語でのWritingでもSpeakingでも、個性を出すことはできます。まずは自分が打ち込める分野を見つけて、時間はかかりますが、少しずつ自分のコトバを見つけましょう。(ちなみに話し方が面白いと言われたのはお酒の話をしていた時でした)

とは言ったものの、外国語で自分のコトバを見つけるのは簡単ではありません。どのようにすればいいのでしょうか。

プロの絵描きも模写から学ぶ

学校の美術の授業で模写をしたことを覚えている人もいるでしょう。これは本格的に絵画を習う人も行うことで、ヴァン・ゴッホが浮世絵を模写したことは有名ですね。英語学習で模写に相当するのはSpeakingならシャドーイング、Writingなら多読だと思っています。それぞれ詳細は過去の記事を参照してください。

Listening & Speakingの基礎、シャドーイングの効能
Listening & Speakingの基礎、シャドーイングの注意事項

多読のすすめ:英文を読み続けると見えてくるもの
筆者の気持ちで読む:英文WritingのためのReading

パブロ・ピカソと言えば抽象画が有名ですが、彼もかつては「フツー」に上手い写実的な絵を描いていました。あの強烈に個性的な抽象画は絵画の基礎の上に成り立っているのでしょう。

英語のSpeakingやWritingも同じではないでしょうか。英語で個性を出したいならば、基礎を学ぶことを恐れないことです。以前、英語で合いの手を入れる時に約束してほしいと言いましたが、「Really?」や「On my god!」ばかり言っていては個性は出ません。相手の表現を盗むくらいの気持ちで傾聴して、自分のコトバを見つけてみましょう。

今回は冒頭で英文サイトを紹介してしまい、「分からないよ」と思った人もいるかもしれませんが、このような英文を読むにもコツがあります。次回は英文Readingについて、翻訳のことも交えながらお話しましょう。

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